アメリカのラジオ局と、ストリーム、AT40再放送をめぐる厳しい状況

競争が激しいフィラデルフィアで常に聴取率No.1を走るAdult Contemporary のWBEB-FM、愛称B101が、3月15日、突然、ストリームの停止を発表しました。(私は、個人的にこの局の選曲をいまひとつ気に入っておらず、暫く聴いていなかったため、ストリームがなくなっているのに気づくのが遅れました。)


ストリーム停止の理由は、レコードレーベルやアーティストなど著作者側のロイヤルティ一括交渉団体、SoundExchange が、ストリームに対して支払いを求めるロイヤルティの高騰への反発です。

アメリカのラジオ局は、レコード、CDの売り上げに貢献しているという理由で、昔から著作権料の支払いを免除されています。ところが、CDがさっぱり売れなくなった結果、作詞・作曲家やアーティストが得るロイヤルティ収入が激減しました。結果、新たなメディアであるストリーム配信については、その発信がラジオ局であってもロイヤルティ支払いが求められています。権利者団体のSoundExchange とラジオ局側の交渉組織の交渉の結果で数年間のロイヤルティ額が決まられていますが、その金額は、ストリーム聴取人口の増加を見込んで、毎年少しずつ値上げされる契約になっています。過去3年間で倍増されており、今後も同じようなペースで値上げされる条件です。

問題は、この金額が非常に高いこと、その一方で、ストリームをしてもラジオ局の収入は増えないことです。聴取人口は増えているはずだが、ストリームの聴取率調査も実験的に始まったばかりで、現状ではその聴取実態やCM効果が未だよくわからないため、スポンサーからのCM料を高くできない。結果、それでなくとも厳しいラジオ局の経営を圧迫しているということです。ストリーム会社に支払う費用や、CMには放送地域の制限があるためストリーム用にCMを差し替えるなど、手間もかかります。ストリームで局が得るであろう利益の相当部分をロイヤルティで支払う結果になる現在の契約を維持することは、B101のような大都市の人気No.1局であっても、難しい状況だということです。もちろん抗議の意味もあるでしょう。

アメリカのFM局は、日本の局とは異なり、一部の大都市の人気局をのぞいては、学校の放送クラブ並みのスタッフで運営しているところが多く、昨年秋からの金融・経済危機の結果、更にリストラが行われています。看板DJがプログラミングもWEB管理も兼務しているような局も少なくありません。AT40の再放送を放送してくれている人気局の中にも、これまでは番組配信を受信して、番組にCMをいれて編集してくれるスタッフがいたのが、解雇せざるを得ず、結果、DJや他のスタッフが交代で通常の仕事の合い間に慣れない編集作業をしているという例もあります。ストリームにはCMの入れ替え作業もあり、かなり大変だと聞いています。80sの番組を放送しているある局のプログラムディレクターは、DJをしながら、更に同じ都市のカントリー局のプログラムディレクターなども兼務することになり、一日18時間勤務の中で、睡眠時間を削ってAT40の番組編集をしてくれているそうです。AT40という番組に対する愛着、熱心なファンからのサポートがなければとても続けられないというのが、お二人の共通意見です。ちなみに、AT40のエンドテーマを最後までかけて欲しいというファンの要望も、AT40エクストラをできれば4曲全部かけて欲しいという要望もそれぞれ多いので、全て実現したいが、番組供給の契約条件である全国ネットのCM放送と、局を存続させるための収入源であるローカルCMを入れると、何かを犠牲にせざるをえないとのことです。

厳しい経営環境下、楽しい番組制作に取り組みながら、ストリームも維持し、AT40の放送も続けていただいている各局のスタッフの皆さんに感謝しつつ、少しでも早く景気が回復し、もう少し普通の状態で放送やストリームを続けることができるようになることを祈念したいと思います。
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